夕焼けの下で
祐一の反応に紗季は、自分の言ってしまったことを後悔した。

「ごっ、ごめんなさい。私…」

慌てて謝る紗季に祐一は、首をゆっくりと横に振った。

「いいよ…。そんなこと聞いたの桐原さんが初めてだから…びっくりした…だけ…」

辛そうな表情を隠すように窓の外を眺めながら祐一が言った。

「……」

その表情と祐一の言葉に紗季は、胸が痛くなり返すことができなかった。

(…今も…好きなんだよね…誰の心も受け入れないくらい…雨宮先輩が…)


…雨宮梓…誰にでも優しく気立ての良い女性。紗季を含め学校中の生徒が大好きな女性で知らない人などいなかった。だからこそ、突然の報告に紗季たちは信じられなかった。

「…桐原さんはさ、梓先輩がなんで死んだか知ってるか?」

遠くを見つめたまま祐一が突然そんなことを口にした。

「えっ?」

祐一の意外な質問に紗季は、驚き何も答えられなかった。

「…梓先輩はさ…俺のせいで死んだんだぜ?」

辛そうにじっと空を見上げて祐一は、言った。

「……」

その横顔に紗季は、胸が苦しかった。

「あの日、梓先輩がどうしても相談があるから一緒にいて欲しいって俺に言ってきた。でも、俺はそんな梓先輩より部活を優先してしまったんだ。それでも、俺は早めに部活を切り上げて急いで梓先輩の元を追いかけた。」

遠く…何かを思い出しながら祐一が話し出す。

「そしたら梓先輩は、まだ歩いてて…だから俺は、名前を呼んだんだ。それが…あんな…ことになるなんて思いもしなかった…』

話していくうちに祐一の声が微かに変わったのことに紗季は、気づいた。それは、肩を震わせながらも涙を流さないように必死に耐えていた。

「名前を呼んだ瞬間、梓先輩は、その声に気づき俺の方へと駆け寄ってきた。そしたら…急に車が猛スピードで走ってきたんだ。そして…そのまま…』

唇を噛み締めるように祐一は、紗季に事故のことを全て話した。
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