夕焼けの下で
「あの時、俺が梓先輩を呼んだりしなければ先輩は…死なずにすんだのに…俺が…俺のせいで…」

そのまま祐一は、座り込み体を震わせながら泣いていた。

(…ずっと…こうやって自分を責めて苦しんでいたんだね…きっとあの日も…)

そんなことを考えていると自然と紗季は、祐一の隣に座り無意識に祐一を優しく包み込むように抱き締めていた。

「…桐…原…さん?」

突然のことに驚いたのか祐一は、弱々しい声で紗季の名前を呼びゆっくりと顔を上げた。

「…秦野くんが悪いわけじゃないよ…その車がスピードをあげたからだよ。それに雨宮先輩だってきっと責めたりしない。」

在り来たりな言葉しか出なかったことを紗季は、悔しく感じる。

(もっと…他に言葉があればいいのに…)

泣きそうな顔で考えていると祐一は、紗季を強く抱き締め返した。

「…桐原さんがそんな顔する必要ないから…」

紗季を抱き締めながら祐一は、優しく言った。その優しさに紗季は、胸が痛かった。

「どうして…?」
「えっ?」
「どうして…他人のことばかり心配するの?自分はもっと辛いのに…」
「……」

紗季の問いかけに祐一は、悲しそうにただ黙って微笑んでいた。


それから紗季たちは、いつの間にか一緒にいることが多くなり紗季は、祐一のそばから離れることはなかった。そして、次の日の昼休み屋上で一緒に昼食をとっていると

「あのさ、桐原さんは、なんでいつも俺と一緒にいるんだ?」

突然、祐一がそんなことを聞いてきた。

「…心配だからかな?」

紗季も自分自身がなんでそばにいるのかわからず曖昧な言葉しか口にだせなかった。そんな紗季に気づいているのいないのか祐一は

「そっか…」

申し訳ない顔で返事を返して昼食を続ける。そんな祐一の瞳には悲しみが溢れていた。
< 5 / 7 >

この作品をシェア

pagetop