恋するサンタクロース
「ああ? ヒーロー気取ってんじゃねえよ!」

その変化が癇に障ったのか、我慢の限界が来たのか、男は青年に殴りかかった。
迫る拳を前に青年は動かない。

顔面まであと10cmというところでようやく動いた。

行った動作は簡単なもので先刻、少女が行ったものと同じ。

違うとすれば左右どちらの足でそれを行うかぐらい。

青年は左足を振り上げた。前に向けて。

そこに男の体が自分でぶつかっていく。

拳は青年に届くことなく、彼の頭の横を空しく通り過ぎていった。
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