「いたずらっこ。」クリスマス
「美味しそうだなあ」
冬の妖精は一枚だけ食べてみた。
さくり、と歯に心地よい感触が伝わり、舌に甘い味が広がっていく。
続けてもう一枚。
さらにもう一枚。
最後に、残りの一枚を食べ終えてしまう。
隣には瓶に入ったミルクが置かれている。思わず手にとって飲んでみる。
焼き菓子とは違う甘さがのどの奥まで染み渡って行く。
これもまた全部飲んでしまったのだった。
そして。
全て終わった後に、トナカイの食料をすべて食べてしまったことに対して罪悪感が生まれたのだった。
「どう、しよう…………」
震える足を抑えきることができずに、冬の妖精は全力で走り去ってしまった。
残されたのは雪が少しだけ積もっている皿と何も知らないトナカイだけだった。