「いたずらっこ。」クリスマス
トナカイが目覚めると空腹感を感じたのであるはずのものを食べようとした。

しかし。

当然、冬の妖精が食べてしまったので残っているはずがない。

トナカイはサンタクロースを呼んだのだった。


「サンタさあああああん!」

「なんじゃい?」


目を擦りながらよたよたと太った老人がやってくる。

トナカイは苛立ちながらも努めて冷静に言った。


「食べ物がありません」

「食べてしまったんじゃろう。わしは明日のことで手がいっぱいなんじゃ」

「さっきまで眠ってたみたいじゃないですか」


ふぉっふぉ、と笑うと老人は再び家のなかに入ってしまった。

トナカイの悪い冗談としか聞こえていないようだった。


それもまた、人生ではよくあることだ。

すれ違い、勘違い、愛し合い。

いろいろなことがこの世界では起こりうる。


トナカイは諦(あきら)めて空を仰いだ。

雪が、ますます強くなってきているようだった。


この分では明日はホワイトクリスマスのイヴになりそうだ。


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