「いたずらっこ。」クリスマス
翌朝。
トナカイは空腹のまま空を飛ぶのか、と思うと悲しいような、苦しい感情に苛(さいな)まされていた。
どうしても、何か食べたいのに。
しかし雪だけが辺りに積もっているだけで、食べられそうなものはない。
ため息をつくと老人がプレゼントを用意しているソリまで歩き、準備をするのだった。
「スレイプや、腹はどうかね?」
「減ってますよ。きゅうきゅういってます。もう……」
「あんなに食べ物をやったのにか? ふぉっふぉっふぉ…………」
サンタはトナカイのきつい視線を軽く受け流してしまうとソリに乗り込んだ。
これから、子どもたちへプレゼントを運ばなければならないのだ。
善良で、純粋な子どもたちにささやかなプレゼントを。
トナカイは目の焦点をなんとか合わせながら寒い冬空を飛んでいる。
ふらつくこともあり、眠気も襲ってきた。
空腹だと言っているのに、誰も信じてはくれない。これもまた、よくあることだ。
真実は一つしかないのかもしれないが、事実は複数あるのだ。
各人によって認識が違うから、上記したような勘違いなどが生まれる。
トナカイはそれを知っている。
これが終わったら、きっと美味しいものが食べられる。
そう信じて飛び続けることにしたのだった。
「あと何軒の家をまわるんですか?」
「そうじゃのう。あと三時間くらいじゃろうか。五兆四千億軒くらいの家は回らないといけないぞい」
「あひぃっ」