君に俺の目をあげる
「悠希ぃ~お前、明日暇?」


「暇っすね」


「よし。んじゃ飲み屋の姉ちゃんと合コンな」


「合コンっすか?全然余裕っすよ」


社会人になり出逢った職場の先輩「慶太」さんからの合コンの誘い。


一つ返事で着いて行くはめになったそんな合コンにも、抵抗など微塵もなかった。


まるで尻軽女みたいな俺は、相変わらず来る女に淡い期待など持っていない。


特別着飾るわけもなく、だらしない身なりで行く。


女に失礼かもしれないが、慶太さんには男としての憧れを抱いていたから、先輩と飲めるのだけは嬉しい。


それだけの理由で行く合コン。


「あっ。初めに言っとくけど理美(りみ)って奴来る予定なんだが、そいつ俺の元カノだから」


「はっ?元カノ?それヤバくないすか?」


「やべぇっちゃやべぇかも…ははっ。でもまっ、いいじゃん。気にすんな」


そう言いつつも、慶太さんはやたら気まずそうにしている。


若干顔を下げ、口元に入った力が何とも言えない。


そんな顔をされたら逆にこっちが気を使う…


「いや、俺そういうの全く気にしないタチなんで、楽しんで飲みましょうよ」


「だな。楽しんだもん勝ちってな」


わざとらしかったかな。


なんて思ったが、一発フォローしとかないと自分の気が済まなかった。


一瞬緊迫した場はとりあえず和んだ。


よし。フォローオッケー。


変に相手の顔色を伺ってしまうのは俺の悪い癖。


そんな癖を持ち合わせた俺は、故意に特別何も考えないようにして、慶太さんが指定した日と時間に合わせ合コンに出発した。
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