君に俺の目をあげる
慶太さんの元カノ「理美」は、ドアに手をかけるなり不機嫌そうに後部席に座り、何も口から発さない。


俺の真後ろ陣取る彼女。


彼女からなにやら小刻みな振動がじんわり伝わって来る。


見えはしないが、おそらくイラツキで足を揺すっているのだろう。


気も強そうだが、短気なのも間違いない。


会話もしてないし、内面なんてまだわからない。


でも、関わったらきっとこういう女は面倒くさい女だと思う。


車内はシーンと静まり返る。


そこは圧迫感があって、居心地が悪くやけに息苦しい。


誰かしゃべれよ。つかしゃべってくれ…


誰に頼んでんだって感じだが、藁にもすがる思いで念を込める俺。


と、願いは通じたのか何を思ったのか突然理美が俺に話しをかけてきた。


「うち理美。よろしくぅ~」


「あっ、ど~も~」


なんだこの会話は。


それも緊張して声裏返ってっし!


自分から願ったくせ不覚にも第一声で格好悪い失態をおかしてしまった俺に、理美は笑いをこらえている。


いっそ笑ってくれりゃこっちもリアクションとれるのに…


「あっ、ちょっと待って」
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