Voice


嵐のような優が去って、

急に、

静かになってしまった。





…なんだか気まずい。


いっそのこと、

気絶したい。




沈黙を破ったのは梓だった。




「具合悪いんだったら、寝てろよ。

今、マネージャーに車頼んでやるから。」





!!




「駄目!!」




携帯を持つ梓の手を

即座に引っ張った。






「はぁ?」




「マネージャーには、

というか、事務所には倒れた事黙ってて。


今日、夜、

ドラマの撮影入るかもしれないって言ってたから!」




そう。





今日は夜から雨が降る予報。



先週から

決まっていた

とても重要な撮影があるんだ。






「…お前、

この後に及んで、

撮影の心配してる場合じゃねーだろ。

そんな体じゃ、

無理に決まってる!」






馬鹿でも、無理でも。






「出来る。

大丈夫。

熱も下がってきたし。」







「どこが大丈夫なん…」



「こんな所で!

この程度の熱で、

私は、

止まってなんかいられないの!!」






お腹の底からそう叫んだ。



そして、

体が震る。






「…美紀、お前…。」




「美紀ちゃん!!」




聞き覚えのある声に振り向くと、

高丘さんが血相を変えて、

ドアに立っていた。





「授業中に倒れたんだって?!

大丈夫なの?

怪我は? 病気は? 熱は?」






「大丈夫です!

ちょっと寝不足気味で、

疲れてただけですから!」






元気を振り絞って

笑顔でそう言った。





「でも、顔色悪いわよ。

…最近は、色々忙しいかったから。

今日は休んで…。」





「いえ!心配いりませんよ!

さっき、

少し寝たら疲れも飛びましたし!」





「無理だ。」






梓がピシャリとそう言った。





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