ふたりだけの特別な絆
「お母さんたち、今何してるの?」
『本社の近くの居酒屋にいるのよ。歓迎会を開いて下さるってことで、他にもお父さんと同じように、出張で来ている方がたくさんいるのよ。』
「へぇ…そうなんだぁ。」
そっか、どうりで電話の向こうがザワザワしてるわけだ…。
『“是非、奥様も参加して下さい”って本社の社員さんに誘われて、お母さんも一緒に来てるのよ。』
「そうだったんだね…。せっかくだから、楽しい時間を過ごしてね。」
元気な声で言うと、お母さんが何かを思い出したかのように、“あっ…”と声を出した。
『…そういえば、さっきお父さんとも話してたんだけど……陽菜にあのこと言ってあったかしら?』
「えっ、何のこと…?」
『ほら…あのこと。き……』
そこまで声が聞こえてきたところで、いきなりプツッと音が途切れてしまった。