ふたりだけの特別な絆
部屋に入った私は、電話が置かれているテレビの横の棚の前へ。
急いで受話器を手にとり、保留を解除した。
「も、もしもし?」
『あっ、陽菜!?お父さんだけど…、悠哉君が同居すること、勝手に決めた上に、何も伝えてなくてごめん…!』
電話の向こうから聞こえてきたのは、申し訳なさそうに謝るお父さんの声だった。
『物騒な世の中だし、2ヶ月も一人きりにさせるのは不安に思ったんだ…。陽菜はお父さんたちの大切な娘だから…。』
「お父さん……。」
『でも、言い忘れるなんて情けないよな…。さっき、悠哉君から夜のことを聞いたよ…。陽菜は面識ないから、かなり驚いただろ…?』
「う、うん…。最初は凶悪な泥棒かと思ってビックリしちゃった…。」
『お父さんのせいで、陽菜には怖い思いさせちゃって、ごめん…。本当にごめんな…。』
「そ、そんなに謝らないで?お父さんも急な出張でバタバタしてたんだし、仕方ないよ…。」
何度も謝ろうとするお父さんに、アタフタしながら言葉を返した。
お父さん…急な出張が決まってから、いつも以上に遅くまで会社で仕事して…
家に帰って来たら引っ越し準備…。
睡眠時間もあまり無かったみたいだった。
あんなにハードなスケジュールだと、忘れちゃったのも無理ない気がするんだよね…。