超能力者だけの世界で。
職員室の黒川赤次。
監視カメラのモニターを視ていた。
黒井颯心と磁波エレキの教室のものだ。
この学校の中は監視カメラだらけである。
「颯心…監視されてるの分かって言ってるな。」
「さすがだなぁー…颯心は。」
向かいの机に座っている教師。
水色の髪の青年。
青崎氷河。
多彩荘に住んでいる青年だ。
勤務中はスーツ。
「颯心は皮肉っぽいことをスラって言うからな…長所だが短所だな。」
「でも、本当のことですよね?澪原水流の事といい、闇原黒也の事といい。」
「…他人事のように言うんだな。友達だろ?」
黒川赤次は、他人事のように振る舞う青崎氷河に訊ねる。
氷河は机に伏せた。
「もう、疲れた。」と呟く。
「取り残されるのに、疲れた。」
この言葉だけは、赤次に聞こえた。
闇原黒也が行方不明。
澪原水流の行方については、赤次は分かっている。
青崎氷河は取り残される。
いつも、いつも。
氷河は机から立ち上がる。
「出席取りに行ってきます。」
いつも通りの笑顔で立ち去る。
独りになる赤次。
「取り残される…か。」
俺もじゃないか…。
自分自身を嘲笑う。
「さて、俺も行くか。」