超能力者だけの世界で。
「氷河さん?」
「ここからだ。ここからなんだ。」
顔色が変わる。
暑くないのに汗が流れる。
止まらない。
エレキが隣で心配そうに氷河を見つめる。
「大丈夫ですか?」
「ああ。」
氷河は無理矢理な笑顔をつくる。
逃げたら出られない。
そう感じた。
「この先に道がない?」
「そうだろうな…時間を稼いでいるのか…?」
このままだと、あの記憶にたどり着く。
氷河は覚悟を決める。
「うわっ…。」
(来たな…。)
場面が切り替わる。
中央区にある公園。
過去の氷河はある女性とベンチに座っていた。
『仕方ないだろ…悪いのは俺じゃない…そうだよ、俺じゃない!!』
(あんなことも言っていたな…。)
子供だった。
形よりも中身の方が。
エレキは状況が分かってないようだ。
「この時は、まだ、普通の人も自由に出入りができたんだ。」
「そうなんですか?」
まだ、隔離される状態前の話。
彼女は普通の人間。
過去の氷河は彼女を慕っているようだ。
それは、誰でも見れば分かる。
「俺は…この人が好きだったよ。」
好きだった。
過去の物語。
この先に能力者が危険視され、隔離されるようになった理由がある。