超能力者だけの世界で。

火野愛紗は3人を連れて屋上にやって来た。

黒川赤次がいた。
血だらけだ。

武装した能力を持たない人間の銃口が一斉に4人に向いた。


「愛紗、窓破って逃げろって言ったろうが。」

「給料から修理費抜かれたら嫌だもの。」

「…まぁ、いい。お前らは手を出すなよ、特にガキは。」


黒いスーツの黒川赤次。
説得中だった。
しかし、上手くいってないようだ。
殺伐とした空気が流れる。



「そういえば、青崎。ここに誰と来た?」

「無能力者と来た。」



黒也は氷河を見る。
まさか…というような顔で。

仲の良い無能力者の女性。
彼女も集団の中にいる。



「変だと思ってたんだ…俺なんかに近づいてくる奴がいるなんてさ。」

「青崎…」



氷河は意外に落ち着いていた。
悲しいかすら分からない。

罵声と共に無能力者達は過激になった。銃撃。

自分を守る為の能力の使用は許されている。

氷の壁を張る。
壁越しに彼女と目があった。



「ごめんなさい、青崎くん。」

「冷たいな…。」



銃口を向けられた。
氷よりも冷たい目をしている。

何でだろう。

泣けてきた。
腹がたった。
恥ずかしい。
あんな人を少しでも信じたのが馬鹿みたいだ。
好きになったのも馬鹿だった。
全てが無駄な時間だった?



「青崎!!!!」



黒也は叫んだ。

空気が冷たくなり、足場が凍りついていく。

氷河に言葉は通じない。
全てを無かったことにすればいい?

能力が暴走し始めた。



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