超能力者だけの世界で。

彼女は愛紗に武器をかまえ、銃撃した。
でも、無意味だ。
愛紗の前では弾は溶けて、ただの鉛に戻る。


「やあ、彼女。あなた、冷たいのね。本当に彼のこと好きだったの?」

「近づかないで!!」

「じゃあ、青崎氷河は利用されていただけなのかな?可哀想に。」

「!!」


愛紗は彼女の目の前に立っていた。さっきまで、何メートルか離れていたはずなのに。
他の数十人いる彼女の仲間は、恐れて攻撃もしてこない。
環境にも耐えられないみたいだ。

「少年は実に簡単に騙せたのかしら?彼は自分のやってきたことが無駄だと気づいたんでしょうね…それが、この結果。あなたのせいよ。」


暴走してしまっている彼に、彼女が見ていた優しい表情は消えていた。
今さら気づいても遅いのよと愛紗は囁いた。


「嘘でも本当でも遅いのよ。彼が元に戻れるかも分からないしね。」


暴走した能力者を正常に戻すのは難しい。
本人の問題であるから。
彼女の表情は涙で埋まっていた。


「嘘なわけないでしょう!?私は誰よりも彼が好きよ!!彼を助けてあげてよ!」

「さぁ?私には分からないわ。」



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