超能力者だけの世界で。
「あー!!もう!!」
愛紗は嫌気が増してきた。
目の前の彼女を本当に殺すつもりはない。
殺る気があるなら既に能力を使っている。
「はぁー…。」
彼女の首を掴んでいる手も微妙な手加減で疲れてきた。
青崎氷河が元に戻る可能性は高い。
時間稼ぎと、きっかけ作り。
それを買って出たのはいいが…時間がかかりすぎている。
最終的な手段は無理矢理で強引な全てを処理。
「殺すのなんて紙を破るのと変わらないのよね。そう思うでしょ?雨番 紗李菜さん。」
「そう…ですね。」
多少苦しげな顔をしている彼女の名前は、雨番 紗李菜。
愛紗も名前だけは知っていた。
彼女には違和感を覚えている。
「あの…もし…彼が助かったとしても…私は死にますよ。」
「それって…」
彼女の謎の言動の意味の答えを訊こうとした。
しかし、その意味を知ることはできなかった。
炎の壁が凍っていく。
そして、粉々に砕け散った。
そこには青崎氷河。
いつもの彼だ。
「おまたせしました。火野愛紗さん。」
「まったく…遅かったわね。少年。」
極寒な世界は消えた。
動けなくなっていた澪原水流も闇原黒也に手をかりて立ち上がる。
黒川赤次も一先ずは安心した。
「おい、もう少し考えて行動しろよ。」
赤次は愛紗に呆れた口調で言う。
失敗した時のことを考えなかったのか。
赤次は愛紗のやろうとしている事を何となく分かっていたが。
即興過ぎる。
「大丈夫なのよ。いざとなったら、赤次が動いてくれたでしょ?」
「まぁ…そうだけど。」
「ノープランな訳ないでしょ。赤次じゃないし。」
「……………。」
赤次は無言になる。
図星。
信頼されているのは分かるのだが、一言多い。