超能力者だけの世界で。


しばらくして救急車に乗り込む。
病院に行った後、
明らかに2人は入院することとなった。
黒川赤次と青崎氷河は同じ病室で数日が過ぎた。


「大丈夫か?氷ちゃん。」

「…赤次さんよりはマシかと。」


赤次は身体中包帯だらけ。
医師にも『どうしたら、こんな風になったのか』と言われていた。
動くのも大変そうである。


「本当は今からでも、ここから逃げ出したい。」

「元気そうですね。」

「そういえば、救急車で運ばれる前なんだが、黒也が初めて俺に甘えてくれたんだ。驚いたよ。逆に心配にもなったな。」

「えぇ!?マジですか?アイツが!?」


氷河は思わず大声を上げてしまった。
すると、タイミングよく病室の扉が開く。
闇原黒也がいつもより鋭い目付きで2人を見て、赤次のベッドの横に立つ。


「黒也、落ち着け。俺は何も言っていない。」

「病室から逃げ出したいってところから聞いていた。」


黒川赤次と闇原黒也が騒いでいる。
その空間の中に澪原水流がやって来た。


「氷河!!」

「水流、痛いんだけどな。」


氷河に飛びつく水流。
本日、やっと面会ができるようになったのだ。
水流はずっと心配していた。


「よかった。オレの知ってる氷河に戻ってる。」

「水流…。」

「優しくて、一緒にいると安心するんだ。」


最近の氷河は何かが変だった。

あまり能力を使いたがらなかった彼が、不良相手に毎日のように喧嘩をしていた。

笑顔も見せてくれなかったし、
話すらかけてくれなくなった。


「オレの…せいなのか?」

「違う、お前のせいじゃない。俺がバカだったからだ。今まで悪かったよ。」


黒也と水流は逸脱して能力者としては強かった。
実力主義の学校でも優秀。
氷河は普通の中の普通。

どうしたら、2人のようになれるのか?
経験が足りないのだろう。
でも、分からなかった。

そして、空回りして道を外しかけた。


「もう、大丈夫。俺にでも、できることが分かったから。」


氷河はニコリと笑う。

誰でも安心できるような場所でありたいと思う。

彼女の言ってくれたことを忘れずに…優しい存在でありたい。

それが、自分にできることだ。


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