超能力者だけの世界で。
6、『表裏戦慄戦線』
《北の青い鳥》
「君は誰?」
「えと…オレは…」
ひだまりの病室。
ベッドで本を読んでいる黒髪、紅い目の少年。
その部屋の扉を開けた青髪の少年。
二人の少年は出会った。
「水流。」
「君も入院しているの?」
「友達がね。部屋間違えちゃった…ごめん。」
水流は恥ずかしがりながら、扉を少し閉める。
病人の少年は笑顔だった。
「僕は…闇原黒也。見ての通り病人。」
病人には見えないぐらい元気な様子だ。
水流は扉を開けて彼に近づこうとした。
すると、黒也は悲しげな顔で言う。
「ごめん、その場所から動かないで。本当は誰も入れないはずだから。」
「え…?」
水流は後から『立入禁止』の張り紙に気づく。
「僕の能力は危険なもので、尚且つ元々、暴走させやすい体質。隔離されているんだ。」
ずっと。
水流は言葉をつまらせた。
何をいいか分からない。
その様子に気づいた黒也は笑いながら言う。
「君が気にすることはないよ。久しぶりにお客さんが来てくれて嬉しかったよ、ありがとう。」
でも、寂しそうだった。
水流は何となく口に出てしまった。
「また…来てもいいか?」
「もちろん、嬉しいよ。でも、バレないようにね。」
そして、時々だが2人は会っていた。
水流は黒也のために外の話をした。病院の外の話。
黒也は喜んで聞いた。
「いいなぁ、病室の外か…。」
「いつか行けるよ。」
こんなやり取りも多かった。
黒也は諦めているようだった。
「だと、いいけどね。」
「あ、そう言えば…昨日借りた本。ありがとう、面白かったよ。」
何気ない会話もした。
時々しか会えなかったけれど、友達だった。
水流は連れ出してあげたいと思ったこともあった。
でも、それは不可能だった。
日に日に会う回数も減った。
『彼を外に出すためには…記憶を消すか、一時封印する必要がある』
と、聞いてしまったから。