超能力者だけの世界で。


「…あの子は本当に分かっているのだろうか。」


北区代表は水流への不安を隠しきれていない。
敵を一蹴しながらも、心配が絶えない。
漸は返り血まみれである。
相手を斬り倒しているが、急所は狙っていないので大丈夫だろう。

向かってくる者を淡々と回避し、倒していく。
北区代表だけあり闘い方に余裕がある。

漸は自分の周りを片付けたので水流の所に戻ることにする。


すると、後ろに誰かが立っていた。




「初めまして。北区代表、浅斬 漸さん。」




黒い髪、赤い目、スーツ姿の青年。
彼の姿は黒川赤次を思い出させる。


「闇原黒也…。」

「澪原!!澪原は何処にいますか?」

「お前…どうした?傷だらけではないか。」


傷だらけ、血まみれ。
漸が見ても危険な状態だということが分かる。
特に右半分の損傷が酷い。


「…お前を会わせることはできない。水流を殺すために来たのだろう?」

「通してくれ。俺はアイツと大事な人達を護ることにした。」


闇原黒也に刀の刃を向ける。
黒也は怯まない。
どうしても、会わなければいけない。


「そんな勝手な事をすると、《創始者》が黙って見ていると思うか?」

「大丈夫、落とし前つけて来ましたから。」




そう言った闇原黒也は―――。




「ハァ~…、仕方ない。」

「ありがとうございます。」


刀を仕舞い、黒也に近づいていく漸。
驚いたような表情を浮かべる黒也。
そして、「よいしょ」と言い軽々黒也を持ち上げる。
お姫さまな感じのアレである。


「ちょっ…!?」

「運んでやるよ。そんなんじゃ、動くのも大変だろう?」

「しかし…。」

「大丈夫だろう?そんなに嫌だろうか?水流は何も言わなかったのだが…もしや、お前はしたい派なのか?それとも…」

「もういいですから!!運んでください!!」


また北区代表の変人ぶりが発動する。
黒也も見事に無言、撃沈。
血で赤いのとは別に、顔を恥ずかしさのあまり真っ赤にしている。
その様子を見て漸は少し微笑んだ。



(…もう、赤次さんが心配しなくても大丈夫そうだな。)





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