超能力者だけの世界で。


合世色弥は壊れた町の中に立っていた。

殺してはいない《烏》の倒れている場所まで歩く。

赤次はエレキを連れて、ビルの屋上から降りて色弥の所に向かった。


「知ってます?この《烏》の顔を隠している白い布の下。」


色弥は倒した《烏》の顔の白い布を剥がす。


「!!」


黒川赤次は何とも言えない驚きが隠せない。
その剥がされた下の顔には見覚えがある。


「どういうことだ?」

「《創始者》によって殺された人。体だけで中身は空っぽですけど。」

「確かに以前に五区代表だった1人だ。」

「『黒条影助』も形だけなら、残っているかもしれませんね。」


形だけで、中身は空っぽ。
玩具の人形と同じだ。

エレキは赤次の顔を横目で見る。
そして、無表情の赤次は呟いた。


「まったく…酷いことしてくれるよなぁ。」


彼の赤い目は、いつもより殺気を帯びて鋭い眼光。
怒りを隠しきれていない。
空気は一瞬にして変わる。
刃物が張り巡らされたように危険な空気。


黒川赤次は《怪物》だ。


そんな言葉が頭に浮かぶエレキ。

怖い。危険だ。早く逃げろ。

頭の中が、恐怖で一杯になってしまった。

戦闘、能力者の知識においても半人前の彼には精神的に耐えられない。


(怖い…)


少年は、うずくまった。
精神が潰されてしまうような殺気に体も耐えきれなくなった。

それに気づいた色弥は駆け寄ろうとした。
しかし、途中で立ち止まった。



『大丈夫かい?』



優しい声。
エレキはうずくまったままの状態で顔を上げる。
目の前に黒いスーツの男。
手を差し出す。
闇原黒也に似ているが違う。


『黒川はバカだからさ、大変だよね。戦闘以外。』


赤次の全てを対象とした威圧感が消える。


『何さ、変な顔して。』

「お前…。」

『まあ、当たり前か。死んでいるからね。』


幽霊ではない。
感触も声も。

でも、既に彼は死んでいた。



『黒条影助だ。初めまして、磁波エレキくん。』



少年の手を掴んだ手は確かに冷たかった。




『さあ、楽しいことをしようか…《血戦兵器》』




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