超能力者だけの世界で。
黒也の部屋。
「黒也。どうかしたの?」
「…。」
青年はある友人の事を思い出していた。
自分に嫌気が差したんだろう。
帰って来なくなった。
エレキの部屋から、
その面影を感じた。
「俺は…。」
「何かしら?」
「澪原を…。」
「そう。そのうち、帰って来るんじゃない?私はそろそろ失礼しますよ。」
愛紗はそう言った後、帰って行く。
黒也は、1人部屋に残される。
Yシャツの姿になって、
近くにあった椅子に座る。
(澪原に会って何を言えばいいんだ…。)
闇原黒也は、
澪原を自殺させる位なら、
自分が殺した方がマシだと思ってしまった。
今、思うと馬鹿げた事だ。
『澪原水流を殺す』ということに恐怖の1つもなかった。
(俺は、馬鹿だ。)
青年は捜している者が、
隣の部屋にいるとは思っていない。
それとは裏腹に火野愛紗は、澪原水流がエレキの部屋に入るのをこっそりと見ていた。
(黒也もあそこまで凹むと何にもできない。)