超能力者だけの世界で。


「あぁ…。寒い。」


ある少年は、夕飯の食材調達にスーパーに行き、多彩荘に戻る所である。



「腹減った…。」



磁波エレキは暗い夜道を歩く。
人通りが少なく街灯も少ない。



「ん…?」



路地裏の狭い道で何かを見つける。



「そんな所で寝てると風邪引くぞ?」



黒い髪の緑色の瞳の少年。
磁波エレキと同じような背格好。薄着で体を縮めて寝ていた。


エレキは、少年に声をかける。



「ん…?」

「風邪引くぞ。」



少年は目を覚まし、エレキの顔を見た。

目は光は無く絶望に満ちているようだった。

少なくともエレキは、そう思った。



「君は…優しいね…。」

「は?」

「こんな奴に声をかけるなんてさ…。」



座り込んだまま、エレキに言った。
哀しそうな目を向けて。



「ほら、やるよ。コレ。」

「え…。他人なのに…?」

「磁波エレキだ。これで他人じゃないだろ?」

「…。」

「お前も名前ぐらい言えよ。」



磁波エレキは首にかけていたマフラーを渡した。

少年は目を見開いてエレキを見る。

知らない人が声をかけてくれて、こんな事までしてくれるなんて思っていなかったからだ。


この場所に居て初めての事だった…。



「オレは…。風霧 瞬牙…。」



名乗った少年の身体は傷だらけだった。




< 33 / 170 >

この作品をシェア

pagetop