超能力者だけの世界で。
「あぁ…。寒い。」
ある少年は、夕飯の食材調達にスーパーに行き、多彩荘に戻る所である。
「腹減った…。」
磁波エレキは暗い夜道を歩く。
人通りが少なく街灯も少ない。
「ん…?」
路地裏の狭い道で何かを見つける。
「そんな所で寝てると風邪引くぞ?」
黒い髪の緑色の瞳の少年。
磁波エレキと同じような背格好。薄着で体を縮めて寝ていた。
エレキは、少年に声をかける。
「ん…?」
「風邪引くぞ。」
少年は目を覚まし、エレキの顔を見た。
目は光は無く絶望に満ちているようだった。
少なくともエレキは、そう思った。
「君は…優しいね…。」
「は?」
「こんな奴に声をかけるなんてさ…。」
座り込んだまま、エレキに言った。
哀しそうな目を向けて。
「ほら、やるよ。コレ。」
「え…。他人なのに…?」
「磁波エレキだ。これで他人じゃないだろ?」
「…。」
「お前も名前ぐらい言えよ。」
磁波エレキは首にかけていたマフラーを渡した。
少年は目を見開いてエレキを見る。
知らない人が声をかけてくれて、こんな事までしてくれるなんて思っていなかったからだ。
この場所に居て初めての事だった…。
「オレは…。風霧 瞬牙…。」
名乗った少年の身体は傷だらけだった。