超能力者だけの世界で。


「終ったな。」

「ああ。」

「磁波兄弟の手柄だな。」



黒也、水流、氷河は、
地面に座って一息ついた。



「大丈夫か?」

「ああ。よく頑張ったな。」



優しい顔の磁波カンジ。
実の弟に優しく声をかけた。


エレキは信じられない。
あの頃とは、全く別人である。



「もっと、近くに寄ってくれないか?」



少年は兄の方にさらに近づいた。


「御免…。俺が力足らずで、今までずっと…会えなくて。」

「?」

「お前を改造したのは…俺だけど、俺じゃない…。」

「それって…。」

「会えて良かった…。」



突然、カンジはエレキを強く抱いた。

優しい兄の姿。
優しく温かい。

エレキは嫌がらなかった。



「ありがとう。」

「…?」



優しく離れていくカンジ。
そして、気分が晴れているような笑顔だった。



「これを渡そうとしたんだ。受け取ってくれ…」



少年がいつも、はめている手袋。いつも宛名無し宅配便で届く手袋だ。

磁波カンジは弟の為に送っていた物だったのだ。



「あんたが…贈ってくれていたのか?」


(俺は…誤解してたのか?何が嘘で、何が本当なんだ?)





< 53 / 170 >

この作品をシェア

pagetop