超能力者だけの世界で。
「終ったな。」
「ああ。」
「磁波兄弟の手柄だな。」
黒也、水流、氷河は、
地面に座って一息ついた。
「大丈夫か?」
「ああ。よく頑張ったな。」
優しい顔の磁波カンジ。
実の弟に優しく声をかけた。
エレキは信じられない。
あの頃とは、全く別人である。
「もっと、近くに寄ってくれないか?」
少年は兄の方にさらに近づいた。
「御免…。俺が力足らずで、今までずっと…会えなくて。」
「?」
「お前を改造したのは…俺だけど、俺じゃない…。」
「それって…。」
「会えて良かった…。」
突然、カンジはエレキを強く抱いた。
優しい兄の姿。
優しく温かい。
エレキは嫌がらなかった。
「ありがとう。」
「…?」
優しく離れていくカンジ。
そして、気分が晴れているような笑顔だった。
「これを渡そうとしたんだ。受け取ってくれ…」
少年がいつも、はめている手袋。いつも宛名無し宅配便で届く手袋だ。
磁波カンジは弟の為に送っていた物だったのだ。
「あんたが…贈ってくれていたのか?」
(俺は…誤解してたのか?何が嘘で、何が本当なんだ?)