ひみつのはら

「がんばる……?」

 あたしが聞こうとしたときには、ゆかちゃんは歩きだしていた。

「ゆ、ゆかちゃん?」

「こっちゃん、ここから見てよ」

 あたしも歩きだそうとしたけど、さっちゃんに止められちゃった。

「なんかね、ゆかちゃん、こっちゃんに勇気もらったみたいだよ」

「ゆうき?」

「じつはさっき、ゆかちゃんに聞かれたんだよね。『こっちゃんはどうやってゆうちゃんと仲良くなったの?』って」

 あ、そっか。さっちゃんは知ってるんだった。

 去年、ゆり組のあたしが勇気をだしたこと。

 去年の七夕まつりで。

 音のない、ぼやけた園庭に、もう1人見えた。

 ナオちゃんだ。

 ゆかちゃんの声が、大きく聞こえた。

「ナオちゃん、あのね。わたし……ナオちゃんがね、だいすきなの」

「急にどうしたの?僕もゆかちゃん好きだよ」

 やさしく笑うナオちゃん。ぱあっとおっきな笑顔になるゆかちゃん。

「ねぇ、さっちゃん」

「なに?」
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