ひみつのはら

 ほんとはね、2人のそばに行こうとしたんだ。


 だけど、できなかった。
 
 

 うつむいたたっくんが、もっとちっちゃな声で、とても苦しそうな声で、言ったから。


「あのね、ナオちゃん……ごめんなさい」


 たっくん、泣いてるの……?


「お、お祝い、できなくて……ごめ、なさ……い」 


 ―――知らないって、怖いね。


 おねえちゃんの予想は合ってた。


 たっくんは、お祝いしたかったんだ。


 それなのにあたしは、たっくんのきもちを知らないで。


 あんな、ひどいこと言っちゃったんだ。


「どうしてあやまるの?たっくんは、ぼくにいっぱい"おめでとう"っていってくれたよ?」


 ふるふると首を横にふるたっくん。


 そんなたっくんに、ナオちゃんは「いい子いい子」した。


「ぼくはね、みんなのプレゼントよりも……たっくんが『おめでとう!』っていって、笑ってくれたことのほうがうれしかったんだよ」 


 ちょっと「え」ってなったけど、ちゃんとわかったよ。


 今の言葉は、ナオちゃんのやさしさ。


 ナオちゃんは、友達を安心させられるやさしさを持ってるんだ。


 あたしも、それをもらったんだ。




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