ひみつのはら

「……みんな、すきじゃないから」

 ボクの小さな呟きを、飛鳥先生はどう思ったんだろう。

 ただ、黙っていた。

「ボクは、みんながすきじゃない。みんなも……ボクなんてすきじゃない」

 話しかけて来るだけで、自分の話だけして、みんな離れてく。

 誰も、ボクが話そうとするのを待たない。

「それに……入園式の時、へんって言った」

「どうしてかな。何でみんな変って言ったの?」

 静かに飛鳥先生が訊く。

 きっと知ってる。飛鳥先生はその訳を知ってる。

 なのに、なんで訊くの?

「どうして?」

 その時、入口からそう訊きながら入ってきたのは。

「さっちゃん、おはよう」

 飛鳥先生は、そっと笑った。

 さっちゃんは、ボクを真っ直ぐ見る。

「どうして、へんって言われたの?それがたっくんのおはなししない理由なら……直すから」

 驚いた。さっちゃんは、ボクと話したいと思ってたことに。

 こんなボクと、本気で話そうとしてることに。

 言いたくないけど、言おう。さっちゃんなら、訊いてくれるから。

「……入園式に、お父さんもお母さんもいないのは、へんなんだって」
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