ひみつのはら
8.みさきちゃん
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そこは、薄暗い部屋だった。
まだ残暑の残る初秋だというのに、その部屋はなぜか凍るような空気が流れていた。
その理由は―――おそらく、生命の気配がないからであろう。
テーブル、椅子、ソファ、テレビ……一通りの家具はあるが、薄い闇に埋もれている。
テーブルの上に、花瓶があった。
1年前、そこに花が生けられていた。
今は、何もない。
誰もいない部屋の片隅が、ふいに動いた。
生命を感じられなかったそれは、少し動いて、そして……知った。
――あぁ、そうか。
だから、「ぼく」は「ここ」にいるんだね。
その部屋は、誰にも知られていない……地獄だった。
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