ひみつのはら
8.みさきちゃん



             ♪



 そこは、薄暗い部屋だった。


 まだ残暑の残る初秋だというのに、その部屋はなぜか凍るような空気が流れていた。


 その理由は―――おそらく、生命の気配がないからであろう。


 テーブル、椅子、ソファ、テレビ……一通りの家具はあるが、薄い闇に埋もれている。


 テーブルの上に、花瓶があった。


 1年前、そこに花が生けられていた。


 今は、何もない。





 誰もいない部屋の片隅が、ふいに動いた。


 生命を感じられなかったそれは、少し動いて、そして……知った。




 ――あぁ、そうか。


   だから、「ぼく」は「ここ」にいるんだね。





    その部屋は、誰にも知られていない……地獄だった。



             
             ♪





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