ひみつのはら

 そっか。みさきちゃんも、ずっとたっくんに会ってないんだ。


 あたしもなかなかお兄ちゃんに会えないから、すごく分かるよ。


 だけど。


「あの……実は先輩。一昨日、幼稚園の連絡網が回りまして。その時このみ、間違えて自宅に掛けちゃったんです。そしたら……」


 そしたら。


「じゃあ一回戻って来たのかな。何も聞いてないから、何も言えないけど」


 やっぱりそう言われるか。


「えっと……たっくん、幼稚園やめるのイヤじゃなかったの?」


「お父さんは、平気だったって。

あの子、人見知りするから絶対無理だと思ったんだけどね。それに……」


 みさきちゃんの言いたいこと、分かるよ。


「たっくんは、私がキライだからね〜」


 でも、それはちがうんだよ。


「あのね、みさきちゃん。電話でたっくん言ってたよ。

ホントは発表会出たいって。行けなくて、ごめんねって。



     みさきちゃんたちに、見てほしいって」


 最後のは、あたしが感じたこと。なんでたっくんのために……とは思うけど、でも、イヤなんだもん。


 あんなさみしそうなたっくん、見たくないんだもん。







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