ひみつのはら

 言ったあと、あたしは左側を見る。


 やっぱり!夢と同じ、ダイニングテーブルがある!


 その上の、キレイな花瓶まで。


「……こっちゃんは、この部屋がたっくんの家のだって知ってたの?」


「ううん、今はじめてしった」


「じゃあ……とくに手がかりはないか」


 う。そうだね……。


「あ、だけど!言ってたよ。のはらがね、『その子を、お部屋から連れだして』って。その子って、たっくんのことじゃないの?」


 遠足のときにも、夢について考えた。あたしはいまでも、夢ってただ見るだけのものじゃないって思ってるよ。


「夢は夢だよ。現実じゃない。それに、この部屋にはあたしたち以外だれもいないよ」


 さっちゃんがそう言っても。


「このお部屋じゃないかも!たっくーん!いるのは分かってるんだ、出てこい!!」


「あ、大きい声出しちゃだめでしょ!」



 だって、ぜったいたっくんは―――泣いてるから。






「君達、何をしている」


 その前に、あたしたちが泣いちゃうかもしれないけど。




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