ひみつのはら
11.みにくいあひるのこ
12月24日、夜の8時。
あたしとさっちゃんは、手をつないで病院にいた。
「たっくん、まだかな……」
5時くらいから、たっくんはずっと“ちりょうしつ”から出てこない。ここでケガの手当てとかするらしいんだけど……。
まさか、このままずっと出てこないってことは……。
「2人共、もう遅いから今日は帰りなさい。家族の皆も待ってるよ」
飛鳥先生の、何回目かの言葉。でも、ぜったいうんって言わないもん。
さっちゃんもあたしも、そう決めたんだ。
発表会もあったし、おねえちゃんたち見ていっぱい泣いて、すごくつかれてる。
ごはんもちゃんと食べてないからおなかすいてる。
でもね、たっくんはもっともっとつらいはずなの。
だから待つんだ。
「また明日来よう?おねえちゃん、大学休むから。このみ達も幼稚園休んで、ね?」
ごめんね、おねえちゃん。おねえちゃんもつかれてるのに……。
「やだ!ぜったいぜったい、たっくん出てくるまで帰らない!」
「このみ……」
―――その時。ガラッと“ちりょうしつ”の扉が開いて、お医者さんが出てきた。
「先生、拓人くんは……」