ひみつのはら
 
 おねえちゃん―――小川由紀おねえちゃんは、あたしの従姉。今、大学3年生。


 あたしはおねえちゃんと2人暮らし。お父さんとお母さんは、4年前に死んだ。

 だから、あたしと今は離れて暮らしているお兄ちゃんは「おじいさま」の家に引き取られた。 


 でも、お父さんとお母さんは「駆け落ち」したんだって。だから、「レキシブカイユイショアル小川家」の恥さらしって言われてた。


 そんな人達の娘と息子を、かわいがると思う?


 実際、お兄ちゃんは「良い跡取りになる」って言われてうまくやってる。


 でも、あたしは違うんだって。人間じゃないって、いじめられた。


 きっと一生ここでいじめられるんだな、そう思ったら、誰も信じられなくなっちゃった。


 そんな中、もう今から三年も前になる。
おねえちゃんが大学に通うことになって、1人暮らしを始めることになったのは。


 その挨拶に来たおねえちゃんは、心を失くしかけたあたしを見つけてくれた。そして、「私が面倒を見る」って引き取ってくれた。


 最初は反対したおじいさま達だけど、すぐに「養育費は送る」って認めた。


 やっと、あたしは解放されたんだ。


 それから3年かかって、やっと普通の生活ができるようになったんだ。これも全部、おねえちゃんのおかげだよ。


 でもね、未だにこれだけは治らないの。

同じ年の友達も少しだけできたし、おねえちゃんや隣のおばさんに甘えることもできるようになってきた。


 だけど、3年かけてやっと慣れてきた人にしか笑って話せないの。


 
 あたしは「人間不信」です。

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