ひみつのはら

 ぎくっとしたように、ふいっと窓の外を見るたっくん。

 素直じゃないな~。

 よーし、今渡してやる!

 ガサガサし出したあたしを、チラッとたっくんが見るのが分かった。

「はい、たっくんにプレゼント」

「な、何?……あめ?」

 それはあの「夢色あめ」。

「ねぇたっくん。たっくんには夢ある?」

「……あるよ?」

「じゃあ、その夢が叶うように、それはお守り」

 たっくんはしばらくその飴を眺めてた。何を思ってたのか、その時のあたしには分からなかった。

 でも、少しでも支えになってくれたらいいな。



 幼稚園に着いた。みんなそれぞれの親と、自分の家に帰って行く。

「こっちゃん、またね」

 みゆきちゃんが手を振った。あたしも振り返す。

 と思ったら、みゆきちゃんが駆けて来た。

「今日、こっちゃんの夢見れるかな。こっちゃんもみゆきの夢見てね。おやすみ」

 駆け戻っていくみゆきちゃんの手には、あたしのあげた飴玉。

 あたしの手には、みゆきちゃんからもらった飴玉。
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