ひみつのはら

 ご飯を食べ終えたあたしは、急いで洗面仕度をして、着替えて、髪を縛って……。


 出かけるばっかにした。


「お、今日は早いじゃん。張り切ってるね~」


「だって今日から一番大きくなるんだもん!ねーねー、早く行こっ!!」


 それに今日は珍しくおねえちゃんと行けるんだ。
いつもはお隣のさっちゃん―――宮本桜ちゃんっていう友達と一緒に行くんだけど、今日は特別。


「まだ早い気もするけど……ま、いっか。このみがここまで行きたがるのも珍しいし。じゃあ行こう!」


 そして、あたし達は家を出た。



            ♪



「おはようこのみちゃん、お姉ちゃん。早いね~」

「おはようございます」

「……」


 話しかけてくれたのは、去年担任だった先生。けど、あたしは答えない。


 話すのが嫌、というよりは……怖い。


 無言のあたしに「う」となりながらも、先生はあたしの制服に名札を付けた。


 それは濃いピンク。この色は確か!


「新級おめでとう!このみちゃんは今日から、梅組です!いよいよ年長さんだね。頑張ろう!」


 やっぱり!!


 あ、言い忘れてたけど、ここは緑幼稚園。大人は幼稚舎って呼んでいる。


 あたしは今日から年長さんになる5歳。別に小っちゃい子供じゃないからね!


「じゃあ行って来るね、このみ」

「……ばいばい」


 おねえちゃんがいなくなって、ふいにドキドキする。


 あたし、こんなに早く来てメーワクだったかな。さっき挨拶ちゃんとしなかったから、先生怒ってるかな。


 怒ってたら、叩かれるかな……。


 と。

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