ひみつのはら

 本家に来てすぐ誕生日を迎えたあたしは、「おめでとう」って言ってもらえなかった。

 だから、この日が誕生日だって分かんなかった。

 おねえちゃんちが来た時、初めて知った。

 その時、おばあさんが呟いた。

 ―――オシツケルンダッタラ、ウマナキャヨカッタノニ。

 その意味、今でもよく分かんない。けど、なんとなく感じた。

 またお母さん、そしてあたしのこと悪く言ってるんだって。

 誕生日。おねえちゃんが引き取ってくれるまで、嫌なものだった。

 だから、「おめでとう」って言ってもらえるだけいいんだ。

「このみ?」

 おねえちゃんの声にハッとする。いけないいけない。早く選ばなきゃ。

 誕生日。今はすっごく嬉しいもの。

 そんな日に、こんな暗いこと考えちゃだめだめ!!

「えっとね~、あ、これ!これがいい!!」

 あたしが指さした時、もう1本指が。……え?

「あれ?確か、こっちゃん、だったよね?」

 それはなんと、しげるくん!!と、そのお母さん&お姉さん!!

「このみの友達?」

「え、ええと」

 あたしとおんなじケーキを指さしたしげるくんが、こっちを見る。

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