ひみつのはら
全く、何の用が……。
「このみ」
おねえちゃんがあたしを呼ぶ。そして〝おねえちゃんのけーたい〟を差し出す。
ん?もしかして……。
急いで耳をあてる。
『もしもし、このみ?』
久しぶりに聞いた、この声―――!!
「お、お兄ちゃん!?」
『久しぶり。あと、誕生日おめでとう』
うそうそうそ!!?ホントにお兄ちゃんだ!!
「だ、大丈夫?大人に怒られない?」
『ま~たそれからか。いつ治るんだよ。おれは全然平気だよ。もう心配すんな。それより……なかなか電話できなくて、ごめん』
「な、なんで謝るの?お兄ちゃんは悪くないじゃん」
そうだよ。あたしが、……弱虫なだけだよ。
それに、こうやって少しでも話せてうれしい。お兄ちゃんはいいことしてるんだよ。
『このみ、どう?幼稚園は。ちゃんと友達できた?』
今度はあたしが廊下に出た。2人で話したくて。
「……あのね」
お兄ちゃんになら、あたしは何でも言える。お兄ちゃんも、自分の弱いところを見せてくれるから。
「あたし、今、友達になりたい子がいるの。でも、今日その子に……友達じゃないって言っちゃった」