ひみつのはら
あたし、しげるくんを傷つけたのに……。
「ほ、ほと、ほんとでも、だめ」
「おまえさっきから変な喋り方するな。ちゃんとはっきり言えよ!」
「……」
「何こいつ、気持ち悪い。行こうぜ」
あたしの悪口を言った男の子たちは、そう走っていった。
あたしはただ、しげるくんを見ることしかできなかった。
確かに……なんか、ヘンだよ?しげるくんの喋り方。
そっとあたしはしげるくんに近づいた。足は、まだ震えてる。
「し、しげるく……」
声をかけようとした。
でも、それより先に……しげるくんが駆け出した。
靴も履かないで、園庭に飛び出した。
え!?ど、どうしよう!!どうすれば……ええいっ!!
思い切って、あたしも園庭に飛び出した。靴は……いいやっ。
登園して来る子たちは驚いてあたしたちを見る。でも、しげるくんが気にしないで走るからあたしも気にしない。
やがて幼稚園を出て、住宅街を通って、畑の横を走って……。
息がぜえぜえしても、しげるくんは止まらない。苦しいけど、あたしも走る。
ねぇ、しげるくん。どうしてそんなにがんばるの?
苦しくないの?