不器用な僕たち
◆雅人 side◆
◆雅人 side◆
神様っていうのは意地悪だよな。
千亜紀に対する気持ちにもっと早く気付いていたとしても、結局は遅かったんだ。
物心ついた時からあいつは、「涼ちゃん、涼ちゃん」って金魚のふんみたいに兄貴の後ばっかりついていたから。
心のどこかで少しだけ、期待していた。
兄貴が千亜紀のことを「女」として見ることなく、別の誰かとくっついてしまうことを。
そして千亜紀が、兄貴を諦めることを。
「千亜紀って、まだ誰とも付き合ったことないの?」
「うん」
「えー?なんでー?」
「……興味ないから。友達と遊んでいる方が楽しいし」
高校生になっても千亜紀との距離は離れず、また同じ学校、同じクラス。
自身の恋愛事情を聞かれ、千亜紀は「興味ない」と平然と言ってのけた。
少し離れたところでそんな千亜紀を見ていた俺は、おかしくて笑いそうになる。