不器用な僕たち

「……忙しいんだろ、夏は特に。アトラス主催のライブもあるしな」

「あ!そっかぁー。じゃあ今年の夏休みは涼ちゃんに会えないのかなぁ」


千亜紀は本気で寂しそうな顔をする。

駆け引きもない、千亜紀の本当の今の気持ち……。


「帰省ぐらいはするだろうし。まぁ、仕方ないんじゃね?相手は売れっ子ミュージシャンなんだし」

「そうだよね。私は涼ちゃんを応援しなきゃね」


ベルマリはどんどん有名になっていく。

ツアーのチケットも即日完売になるのが当たり前で、オークションでは高値で取引されている。


ずっとそばにいて当たり前だと思っていた兄貴が遠い存在になってしまって……。

ブラコンではないけれど、やっぱり寂しいものは寂しい。

もともと家族思いの兄貴はマメに電話をくれるけれど、顔を見て、ゆっくり話をしたい。



【ねぇ、涼って彼女いるのかな】

【そんな話、全然聞かないねー】



ネットではベルマリの私設ファンサイトがいくつか出来ていて、俺は毎日のようにサイトを訪れる。

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