不器用な僕たち

『……雅人。しばらくこっちには来ないでほしい』


兄貴。

俺をなんだと思ってるんだよ。

そんなこと、いちいち言わなくたって分かっているよ。


『千亜紀には折を見て、きちんと話すから』

「ま、アイツもそこまでバカじゃねぇから分かってくれるよ」

『あぁ、分かってる』



……あの時兄貴は、折を見て話すと言っていたけれど……。

千亜紀の様子だと、兄貴はまだマスコミに追われていることを話していないんだ。


本当に大変な世界なんだな。

イメージを守り抜くために、彼女の存在も公に出来ないなんてさ。


もしも兄貴がデビューしなかったら、千亜紀と堂々と付き合えていたはずなのに。

……けど。

兄貴は、ベルマリのデビューで千亜紀と離れて、それをきっかけにして気持ちが変わったんだ。


――皮肉なもんだな……。

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