不器用な僕たち

その時から、藤森さんは狙っていたのか……。


「杉本千亜紀。実家の隣りに住む幼馴染」

「……凄いな。関係のない幼馴染のことまで調べたなんて」

「……言っとくが、俺だけじゃねぇぞ?このこと知ってんのは」

「争奪戦になりそうですね、そのガセネタ」


あくまでも、知らぬ存ぜぬを貫き通す。

動揺しているのを見破られないように、平静を装おうのに必死だった。


「俺の他に……『ギャラップ』のヤツらも掴んでるぞ」

「……えっ……?」


この業界に入って、事務所の社長やスタッフから、散々聞かされてきた。


この記者には気をつけろ。

この週刊誌には、何を訊かれても答えるな。


そのなかで、藤森さんと並ぶくらいに要注意なのが『ギャラップ』だった。

訴訟覚悟でネタを追い続け、僕はこの世界に入る前から『ギャラップ』の裁判沙汰を耳にしていた。


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