不器用な僕たち
また『ギャラップ』か、と、呆れていた自分が、今その餌食になろうとしているなんて、夢にも思わなかった。
「で?藤森さんが先取りってわけですか」
僕が訊くと、藤森さんは小馬鹿にしたように鼻で笑う。
「俺は今、ベルマリを追っかけている暇はないんだよ」
「へぇ」
「もっと金になるネタを追っているからな」
それならどうして、僕のもとにわざわざ?
敵ともいえる藤森さんの真意が分からず、首を傾げながら訊く僕に、藤森さんはニッと笑みを浮かべた。
「素人との熱愛なんか興味ねぇんだよ。ま、相手が大物女優なら話は別だがな」
大物女優、か。
仕事で何度か女優さんと一緒になることはあるけれど、すべてがその場限り。
それに大物クラスの人が、僕たちのような若手のバンドと一緒に仕事をすることなんてあるのだろうか。
あったとしても、彼女らからすれば僕たちなんて眼中にすらないだろう。