不器用な僕たち
家にも学校にもマスコミがくるだろう。
学校の友達からも問い詰められるだろう。
千亜紀だけじゃない。雅人も、親父もお袋も。千亜紀の家族も。
恋人は千亜紀だけだと言い張る、僕だけの問題じゃないんだ。
「……涼……」
「――……分かりました」
この世界に身を置いた以上、守るべきものがある。
千亜紀との関係を続けていったら、千亜紀だけじゃない、他の人たちの生活さえも侵害してしまう。
僕と来須ミクの事務所は『ギャラップ』に多額の金を積んだ。
正確な金額なんか僕は知らない。
偽装交際のスクープが掲載された『ギャラップ』の発売日前日。
仕事を終えてマンションに帰り着いた僕は、部屋の電気をつけることもせず、携帯を取り出し千亜紀に電話をした。
電話のむこうの千亜紀はひどく喜んでいて、矢継ぎ早に雅人や学校のことなどを話してくれた。
僕はそんな千亜紀の話を一通り聞いたあと、いつもと同じ声のトーンで言った。