不器用な僕たち

さっき記事を見た時の雅人の呆れ顔が、今度は私に向けられる。


「それにさ、おまえ、ちゃんと記事読んだ?」

「……読んだけど……」

「来須ミクの主演映画の主題歌をベルマリが担当するんだろ? あっちの業界じゃ良くある、話題作りってやつだよ」


話題作り……。

そっか、そうだよね。と、自分に言い聞かせながらも、私の頭の中にはあることが引っかかっていた。

涼ちゃんと来須ミク、当人同士も交際を認めたってやつ。

どちらにしろ、涼ちゃんに会って真実を聞くしかない。

このスクープが真実なのか、雅人の言うようにウラがあるガセネタなのか。



――涼ちゃんと会う約束をした週末。

いつもなら「俺も行く」と金魚のフンのように付いて来ていた雅人が、珍しく身を引いた。

事情が事情なだけに、雅人なりに気を遣ってくれたらしい。


雅人にアドバイスされたとおり、私はキャップを目深にかぶり、涼ちゃんの待つ東京へと向かった。

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