不器用な僕たち
「……ねぇ、涼ちゃん」
真実を少しでも早く知ってスッキリさせたい私は、エスプレッソ・ラテに口をつける前に切り出す。
「うん、言いたいことは分かるよ」
ソファに腰を下ろした私の隣に涼ちゃんは座ることなく、突っ立ったまま窓の外の景色を眺めながらポツリと呟いた。
最上階のこの部屋からは、座ったままの私からは空しか見えない。
涼ちゃんが視線を落としているその先には、ひしめき合うように立てられた街並みがあるのだろう。
「……なぁ、千亜紀」
言ったあと、涼ちゃんは手にしていたデミタスカップに口をつけ、エスプレッソを一口飲んだ。
「なに?」
涼ちゃんの真似をして、私も訊き返したあとエスプレッソ・ラテに口をつける。