不器用な僕たち
千亜紀はまだ子供だから、と、涼ちゃんはいつもミルクたっぷりのエスプレッソ・ラテを作ってくれた。
涼ちゃんに近づきたくて、一度エスプレッソを飲んでみたけれど、とても苦くて泣きそうになったことがある。
あぁ、私はまだエスプレッソの味も分からない子供なんだ、と、少し落ち込んだことを今でも覚えている。
「記事、見ただろう?」
「……うん。来須ミクと交際発覚! でしょ?」
ガセであると信じたい私は、笑って、そして呆れたように言った。
「あれ……、本当なんだ」
「――……えっ?」
両手で包み込むように持っていたデミタスカップが僅かに震えた。
涼ちゃんは私に背を向けたまま、こちらを振り返る気配さえも見せずに、淡々と話し始める。
「……千亜紀みたいな一般人と付き合うと……逆に疲れる」
「涼……ちゃん?」
涼ちゃんの口から語られる、真実。