不器用な僕たち
◆涼 side◆
◆涼 side◆
「……なんだ、イタズラ電話か」
無言のまま一方的に切れた電話。僕は腹を立てるわけでもなく、静かに電話を切った。
来月からの全国ツアーを控えて、今日から1週間のオフ。
実家に電話したら、久しぶりに雅人が電話口に出てくれた。
『千亜紀、今度は教育学部のヤツと付き合ってるぜ?』
滅多に僕と話そうとしない雅人が電話に出るときは、決まって千亜紀の近況報告だ。
僕はそれを分かっていながら、「雅人に代わろうか?」というお袋の言葉を断ろうとしない。
むしろ自分から「雅人いる?」と聞くくらいだ。
僕には千亜紀の乱れた男関係を聞く義務がある。
『……千亜紀みたいな一般人と付き合うと逆に疲れる』
あの日、僕はドラマ出演の依頼でもくるんじゃないかと思うほどの完璧な演技で、千亜紀を傷つけた。
『最初は新鮮でいいなって思ってたけどさ、価値観ズレ過ぎだし』
そう言って、僕は千亜紀を見下すようにして冷たく嘲笑った。