不器用な僕たち
問いかけられた瞬間ドキッとして、耳に押し当てていた携帯を思わず落としそうになる。
携帯を強く握りなおしたあと、俺は兄貴にキッパリと言い放つ。
「幼馴染としては好きだけど、女としてはなぁー」
呆れたように、そして、半ばうんざりしたように、俺は大げさに言う。
千亜紀に別れを告げたとき、兄貴もこんなふうに嘘をついたんだな。
好きな人を好きと言えないのは、こんなにも胸が苦しくなるものなのか。
男のくせに、泣きそうになる。
俺のこんな姿、千亜紀が見たら腹を抱えて笑うんだろうな。
『本当か?』
「当たり前だ。いったい何年、俺の兄貴をやってんだよ」
念を押して訊いてくる兄貴に、俺は強い口調ではっきりと言った。
「兄貴。千亜紀を迎えに行ってやれよ。千亜紀はもう未成年じゃねぇぞ」
俺が言うと、兄貴は安心したような穏やかな口調で言葉を返した。