不器用な僕たち

去年、2人の長期オフが偶然重なった時に海外旅行に行ったことがあった。

きっと、そのこととデビュー以来スキャンダルとは無縁だったことが原因で『デキている』説が広まってしまったのだろう。


根強いホモ説に笑いながらBBSを眺めていると、玄関のチャイムが鳴ると同時にカギを開ける音が聞こえた。


「なんだ、また引きこもってるのか?」

「……勝手に入ってくんなって」


自分の家のように勝手に入ってきたのは、ベルマリのギター・浩平だった。

僕と同い年の浩平はメンバーの中で一番最初に結婚し、今では二児の父親でもあった。


「相変わらず根強いなぁ、おまえのホモ説」


パソコンの画面を覗き込みながら浩平が笑う。


「まぁな。本気でホモにでもなってみようか」


僕はそう言うとイスから腰を上げ、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しコップに注ぐ。


「……本気になるところが違うだろ?いいかげん……」

「はい、どうぞ」

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