不器用な僕たち

◇千亜紀 side◇



   ◇千亜紀 side◇


「……私、途中で帰るからね」

「勝手にしろよ」


雅人に強制的に連れてこられた、市民ホール。

私は悪態をつきながら、ホールの最前列、しかも真ん中の席に座っていた。


「……て言うか、始まった瞬間に帰るから」

「うるせぇよ、おまえ」


しつこく「帰る」と連発する私を、雅人は鬱陶しいというような目つきでジロリと睨みつけた。

雅人は私の隣の席で、ベルマリのパンフレットを眺めている。

私は私で、この期に及んで、ここに来てしまったことをひどく後悔していた。


プロデビューしたベルマリのライブに来たのは、これが初めてだ。

涼ちゃんの彼女だった頃も、私はベルマリのライブには一度も行かなかった。

『千亜紀は未成年だから』

そんな涼ちゃんとの約束を素直に守っていた、まだ子供だった私。

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