不器用な僕たち
――……結婚……。
ドアノブを握りしめていた手から力が抜ける。
止まったかのように思えた涙が再び溢れ出して、私は力任せに手で涙を拭った。
ステージ上の涼ちゃんは、両手を大きく広げ、観客を落ち着かせるような仕草をする。
それを見て、場内が徐々に静まり返る。
「まだ、未定です。相手の返事を聞いていないから」
ははっと、笑う涼ちゃんの声がマイクを通して私の耳に伝わってくる。
「届くかどうか分からないけど……」
そう前置きして、涼ちゃんは驚くぐらいの静寂に包まれた場内に向けて語り始めた。
「ずっと傷つけたままで、ごめん。小さい頃からずっと、俺の大切な人に変わりないから。だから、俺のところに永久就職してください」